【第16話】 雷鳥一号◆jgxp0RiZOM 様
『砂浜にて』
友人の話。
海岸の砂浜を歩いていると、行く手からズリズリという音が聞こえてきた。
視線を上げると、西瓜ほどもある黒い毛玉が、こちらに這いずってくる。
「何だろう、海草の生えた大っきなヤドカリかいな?」
そんなことを考えながら呆ッと見ていると、そいつがくるりと上を向いた。
目と目が合った。
砂上を這いずっていたのは、男の生首だった。
サッと目を逸らし、見ていない振りをした。
ズリズリと何かが這う音は止まることなく、彼のすぐ横を通り抜けていく。
音が聞こえなくなってから、恐る恐る背後を見てみた。
何かを引き摺ったような痕だけが、岩の向こうに続いていた。
確かめる勇気など無くて、脱兎のようにそこから逃げ出したそうだ。
【了】